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2011/05/02
今回は「悪性症候群」について紹介したいと思います。
精神科に勤務していたら、一度は耳にしていると思われる「悪性症候群」。しかし、いまだに発症する原因がはっきり解明されておらず、私たちにとってもわかりにくい病気です。
悪性症候群とは向精神薬での治療中に原因不明の発熱、意識障害、筋硬直及び発汗、尿閉などの症状を呈し、適切な治療が行なわれないと死に至る重篤な疾患のことです。
もともと、悪性症候群の悪性とは、タチが悪いという意味で、治療することが難しいために名づけられました。しかし、治りにくい病気ではありますが、使用中の薬をやめたり水分補給など適切な処置を行えば大事に至ることは少なくなっています。また、治療薬の進歩により近年では、悪性症候群が原因で死亡する人は極めて少なくなっています。
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悪性症候群の特徴 |
原因 | 向精神薬を使用する際に、副作用として、高熱、発汗、振戦、頻脈等の症状を認める。 とくに、向精神薬の投与中・増量時には要注意。 また、抗パーキンソン病薬を継続して使用している際の急激な中止・減量でも悪性症候群が起こる場合がある。 |
症状 | 発熱(微熱で始まることもあるが、大抵は38~40℃に至る高熱) 発汗 流涎(よだれを流す) 言語・嚥下障害 頻脈(脈が速くなる) 無動・緘黙(身動きしない、しゃべらない)・意識障害 筋硬直・振戦(筋肉に力が入り、ふるえる) *脱水症状・栄養障害・呼吸障害・循環障害・腎不全等を併発すると死に至ることもある。 |
原因となる 主な薬剤 |
精神神経用剤(レボメプロマジン、クロルプロマジン、ハロペリドールなど) 抗うつ剤(ミアンセリン、ロフェプラミンなど) 消化器機能異常治療剤(メトクロプラミド) 抗潰瘍・精神安定剤(スルピリド) 抗パーキンソン剤(トリヘキシフェニジル、ビペリデンなど)など |
発症時期 | ほとんどが、原因薬物の投与開始あるいは中断後から1ヶ月以内に発現 |
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悪性症候群が疑われる場合の検査項目 |
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予防と治療(対症療法) |
前駆症状の早期発見 向精神薬の中止 ダントローレン投与など |
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多量の汗をかくと極度の脱水症状になる危険性が高いので、こうしたときは水分をしっかり取ることが大事です。発症率は向精神薬を使っている人のわずか1%未満と、きわめてまれですが、風邪などと間違えて放置すると死に至る危険性もある重い副作用です。 治療には入院が必要になります。現在では有効な治療方法が確立されていますので、早期に発見して適切な治療が受けられるよう病院を受診するなどし、医師に報告することが大切です。 |