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2009/09/25
厚生労働省の統計によると、毎年2〜3万人は患者が発生し、一向に減少する様子がない食中毒。しかし、その中身は時代と共に変化しています。
加工技術や低温流通の発達、調理時の加熱処理、冷蔵庫・冷凍庫といった設備などに頼りすぎずに、家庭で基本をしっかり守り、食中毒を防ぐことが大事なことと言えます。
私たちの腸管内には腸内の環境に適応し、定住している細菌群があります。このような菌の集団を常在細菌と呼び、私たちの身体に経口的に侵入した病原菌に対して抵抗力をもつなど、重要な役割を担っています。一方、腸管系病原菌は常在細菌と異なり、外来性の菌でありながら、胃・腸液などの抵抗作用に強く、各菌に固有な腸管部位に定着し、増殖、感染させることができるため、深刻な症状を引き起こすことがあるのです。
平成16年の統計では、病因物質が判明したもののうち、事件数ではカンピロバクター、ノロウイルス、サルモネラ菌、腸炎ビブリオの順に発生が多く、患者数で見るとノロウイルス、サルモネラ属菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクターの順になっており、この4種類で78%を占めています。ノロウイルスは普通の細菌よりもずっと小さく、電子顕微鏡でなければ観察できないほどです。このウイルスは人間の体内で増えるので、糞便中には多量に出てきます。非常に少量(個数から100個程度)でも感染しますから、ちょっと汚したくらいと思っても安心できません。
二枚貝(カキ)による報告が多く、出来るだけ加熱して食べることが安全です。
「加熱用」と「生食用」は細菌の量により決められているため、ウイルスが含まれていないと言う保証はできません。症状は短期間(1〜2日間)で終わりますが、その後、1週間くらいは便にウイルスが排出されるので、調理前の手洗いはしっかり行いましょう。
食中毒を起こし、下痢や嘔吐を繰り返した身体は、水分が不足し、脱水症状を起こしやすい状態にあります。看病される方は水分補給と、適当な塩分、糖分などの補給に気を配ってあげてください。また、嘔吐がある場合は、吐きやすい体位をとり、窒息しないように留意してあげましょう。なお、下痢止めの薬は場合によっては深刻な症状を引き起こすこともあり、危険です。まずは医療機関を受診し、指示を仰ぎましょう。
当院では食中毒検査として便の培養がよく用いられています。シードスワブで便を採取しますが、これは嫌気性菌(空気に触れると死滅する)検出のためです。ボツリヌス菌などがその例です。また、CD毒素など、菌を特定するため、迅速に結果が出る検査もよく用いられています
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